住宅機器販売部
温水暖房システムには、熱源や伝熱方式、全体暖房・部分暖房など、多様な分類があります。しかし、システム水(熱媒)の体積変化(膨張水)をどのように吸収し、運転停止後の冷却時に収縮して不足したシステム水をどのように補充するかという視点も、重要な分類ポイントです。本コラムでは、膨張水の吸収・再充填方式に着目し、「開放式」「半密閉式」「密閉式」の3タイプに分けて、それぞれの構造と特徴を紹介します。
開放式は、大気に開放された膨張タンク(開放膨張タンク)を用いる方式です。運転時の加熱により、システム水がタンクの開放部から少しずつ蒸発するため、定期的な補給(年1回から数回程度)が必要です。
施工やシステム水の補給は比較的容易ですが、その際に大気中の酸素が水中に溶け込んだり、補給される水自体にも酸素(溶存酸素)が含まれているため、システム内部に酸化腐食が発生しやすくなります。
このため、鋼板製の放熱器(温水パネルヒーター)は腐食リスクが高く、使用できません。
また、膨張水の吸収容量(吸収可能容量)は膨張タンクの容量によって制限されます(オーバーフローした分のシステム水は再充填可能容量に含まれません)。
– 構造がシンプルで故障が少ない
– タンクの上からのぞき込めば、水面を直接目視で確認でき、減水状況もすぐに把握可能
– 施工やシステム水の補給が比較的容易
– 安全弁の機能を兼ねるため、安全弁の設置が不要
– システム水が常に空気と接触し酸素が混入しやすいため、配管や鋼板製放熱器のサビ(腐食)リスクが高い
– 鋼板製放熱器の使用には不向きで、銅やステンレス製の放熱器が推奨される
– タンク設置場所に高さ制限がある
– 定期的(年1回以上)にシステム水の補給が必要。膨張タンクの容量が小さい場合はオーバーフローしやすく、運転停止後の再充填時にシステム水が不足する可能性あり。水位が最高位の放熱器以下になると循環できなくなるため、自動給水システムが採用されることが多い。ただし、給水することでさらに酸素が混入し、酸化腐食の原因となる点には注意が必要
– ボールタップや加圧シスターンを使う自動給水システムと併用すると、漏れの発見が遅れるだけでなく、システム水の入れ替わりによるサビ・腐食を助長する
– 安全弁の機能を兼ねるため途中にバルブを設けられず、タンク交換時はシステム水を支障のない高さまで抜く必要があり、水の入替によるサビ・腐食が起こりやすい
開放式システム
半密閉式は、ラジエーターキャップ(圧力キャップ)付きのタンクを用い、平常時は密閉された状態ですが、圧力変動時には弁が開閉して膨張水がタンク内に出入りします。この時、外気も同時に出入りするため、完全密閉ではありません。
システム水の蒸発量は開放式よりも少ないものの、定期的(年1回程度)にタンク内のシステム水残量確認と補給が必要です。外気の混入による酸素の取り込みがあるため、鋼板製放熱器の使用は推奨されません。安全弁(ラジエーターキャップ等)により、通常最大0.09MPa~0.11MPaの圧力運転が可能ですが、1つのシステム区画での階高には制限があります。また、リザーブタンクからオーバーフローした水は再充填可能容量に含まれず、タンク容量がシステム水の吸収可能容量を制限します。
– 空気の混入や不凍液の蒸発が開放式より大幅に抑制される
– タンクは半透明樹脂製が多く、液量を目視で確認・補充可能
– シンプルな構造でコストも低い
– 弁の開閉時に外気が微量に混入(完全密閉ではない)
– 鋼板製放熱器の使用は推奨されない
– 不凍液や水の補給も年1回程度必要(タンク内にシステム水が残っていることが条件)
– 圧力キャップの圧力が0.09MPa~0.11MPa程度に限られるため、階高の高いシステムには不向き。平屋~3階建て程度に限定される
– 通常、小型ボイラーでの内蔵設置が多く、大型の設備では複数台のボイラーで対応する。大型の単独製品は少ない
密閉式はシステム全体を(膨張タンクも含めて)完全に密閉し大気と遮断する方式です。膨張タンク内部はゴム膜(ダイヤフラムやブラダー)で仕切られ、片側にシステム水、もう片側に窒素ガスが封入されています。
運転中も大気と遮断されているため、酸素の混入によるシステム内部の腐食が起こりにくく、鋼板製放熱器も使用できます。
圧力計による管理や、適切なサイズの密閉形膨張タンクの設置が必要です。また、選定や施工時、初期充水時には密閉式特有の技術やノウハウが求められます。
システム内で圧力低下(例えば水漏れ等)がなければ、基本的に継続的な水補給は不要です。ただし、タンクの充てん圧力が低下した場合や、定期点検(外観・ボルト摩耗・接続管・ダイヤフラム損傷等)は必要です。
吸収可能容量および再充填可能容量はオーバーフローがないため一致し、膨張タンクの容量はシステムの使用初期圧力・最高使用圧力・最低/最高温度・全水量・熱媒の種類や濃度など、諸条件で決まります。
– 空気と接触しないため、サビ・腐食の心配がほとんどない。鋼板製放熱器も利用可能
– タンク設置場所は地下や離れた場所でもよく、設置自由度が高い
– 継続的な水補給がほぼ不要で、管理負担が少ない
– タンクのゴム膜や窒素ガスは経年で劣化・減圧するため、定期メンテナンスが必要
– 減水の確認は圧力計による点検(目視不可)が必要
– 設計・施工時に密閉システム特有の知識と技術が必須
– 圧力条件の計算が複雑
密閉式システム
膨張水の吸収方式は、システムの耐久性やメンテナンス性、使用する機器の選択肢に大きく影響します。「開放式」「半密閉式」「密閉式」それぞれの特徴を理解し、ご自身のシステムや目的に最適な方式を選択することが重要です。